大豆雑学

豆腐加工適性や機能性を強化したダイズ品種の育成(1)

2010-5-2

国内の大豆生産量は年間20万トン程度で推移している。これは国内需要のわずか5%にすぎず、食料自給率向上の観点から、増産が必要とされている。輸入大豆の多くは搾油用として使われているが、国産大豆はほとんどが食品に加工され、豆腐への使用量が最も多く、約半分を占める。そのため、豆腐・油揚げの加工適正に優れた大豆品種を求める声が多い。

大豆の品種育成は、もちろん良好な加工適性を第一の目標にしている。大豆にはたんぱく質が40%含まれており、これが豆腐の歩留まりや寄せやすさなどの物性に大きな影響を及ぼすため、豆腐加工適性の改善においては、たんぱく質含有量の向上、すなわち高たんぱく品種の育成を行っている。

それと同時に、最近は健康志向が高まり、大豆の健康機能性にも関心が集まっていることから、機能性成分を多く含む品種育成にも取り組んでいる。

長野で生産される大豆は60%がナカセンナリで、30%がタチナガハである。全国で最も生産量の多い大豆はフクユタカで、主な産地は九州や東海。また北陸のエンレイも有名で、たんぱく質含有量が多く、豆腐加工適性も優れている。

ナカセンナリとタチナガハのたんぱく質含有量は、フクユタカやエンレイに比べると見劣りしてしまう。もちろんナカセンナリでもおいしい豆腐が作れるが、さらに長野の風土に適合し、加工適正の優れた品種の育成に努めていきたい。

高たんぱく品種で豆腐を作ると、一般的に歩留まりが良く、固まりやすい。高たんぱく品種のエンレイと低たんぱく品種のタマホマレを比較すると、エンレイは昭和46年育種され、現在も北陸地方を中心に広い面積で作付けされ、生産量が多い。一方のタマホマレは昭和55年に育種され、近畿、中国、四国で生産されている。

この2品種は偶然にも昭和62年に最も普及し、作付面積はエンレイが2万7,869ヘクタール、タマホマレが2万4,146ヘクタールに上った。一時は西のタマホマレ、東のエンレイといわれるほど広まったが、今ではエンレイは変わらずに北陸で生産されているが、タマホマレは残念ながら非常に縮小している。

その最大の理由は、タマホマレが低たんぱくだったこと。品種を開発した当初、たんぱく質含有量はそれほど重視されず、コンバイン収穫に向いているかなど、生産効率が重要視されていた。非常に育てやすく、収量性も高く、農家は喜んで生産した。

エンレイは高たんぱくで加工適性も優れているから、今でも生産されているが、タマホマレは味は良かったが、歩留まりが悪く、大量生産にも向かないこともあり、作付けは減少している。

このように高たんぱく品種でなければ受け入れてもらえない現状があるため、品種改良を重ねているが、高たんぱくだけでも良くない。歩留まりがいつも良いとは限らず、豆腐が固まりにくい品種もある。これはたんぱく質の特性の問題。カルシウム含有量も関係することが最近になって分かってきた。

しかし、ある程度はたんぱく質含有量の多少で選抜を行い、実際に豆腐を作って加工適性をテストしている。数十グラムの大豆から豆乳を抽出し、容器に移して塩化マグネシウムを加え、充填豆腐を作っている。品種開発はプロでも、豆腐作りは素人だから失敗も多い。そのため試行錯誤を重ね、今ではかなり安定して作れるようになってきた。ただ、豆腐のおいしさは判断基準が難しく、成分を測定しただけでは分からない。(続く)

矢ヶ崎和弘氏(長野県野菜花き試験場畑作育種部長/第13回長野県豆腐品評会での講演より)

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