大豆雑学

豆腐加工適性や機能性を強化したダイズ品種の育成(2)

2010-6-25

機能性については、昨今の消費者の健康志向の高まりを受け、機能性を向上させた品種の育成にも取り組んでいる。

大豆の機能性成分の一つにイソフラボンがある。化学構造が女性ホルモンに似ていることから、更年期障害や骨粗鬆症の緩和、またホルモンバランスの崩れからくる細胞のがん化を抑制する。ただし、サプリメントで過剰摂取するとかえって体に悪く、一時ほどの話題性はなくなったが、イソフラボン含有量を高める品種改良も行っている。

最近、注目しているのが、たんぱく質。大豆たんぱく質にはコレステロールを抑制する働きがあることは以前から知られているが、大豆たんぱく質の一つで、30〜40%含まれているβ―コングリシニンには、血液中の中性脂肪を下げる効果があることが分かってきた。小腸での吸収を阻害し、肝臓での代謝促進と合成抑制効果があり、特定保健用食品のサプリメントでも市販されている。

現在、通常の大豆と比べて1・5〜2倍のβ―コングリシニンを含む「ななほまれ」を育種している。大豆に含まれるもう一つのたんぱく質、グリシニンを欠失しており、それを補う形でβ―コングリシニンが増えたもので、現在β―コングリシニンのサプリメント原料を製造するときは、最初に大豆からたんぱく質を抽出してβ―コングリシニンとグリシニンを分離し、必要のないグリシニンを取り除いてβ―コングリシニンだけを集める作業をするが、コストが非常に高い。

「ななほまれ」にはもともとグリシニンが欠失しているため、コストを大幅に削減できる。サプリメント原料の製造では大いに有意性があり、育種した。決してサプリメントが良いというわけではなく、食品で摂取するのが好ましい。「ななほまれ」を食品に加工して、たくさん食べてもらうのが良いと考えている。

ただし、豆腐にする場合は大きな問題がある。「ななほまれ」が欠失しているグリシニンには豆腐を固める性質があり、固まりにくい。だが、豆腐の機能性を高めるために高たんぱく質を利用するという観点からすれば、加工技術でカバーしてもらいたい。

長野県豆腐商工業協同組合青年部に協力してもらい、「ななほまれ」を使ったデザートを開発をしてもらっている。従来の豆腐とは違うデザート的なもの、あるいは固まらないという性質を生かしてヨーグルトのようなやわらかい食品に、豆腐製造の技術を使いながら、なおかつ機能性の特性をうまく発揮できるような商品開発ができればすばらしい。

また、納豆や煮豆に利用してもらう選択肢もあるが、やはり豆腐の需要が多いから、使ってもらえるように育て上げていきたい。現在、高たんぱく質で食味の良い、品種の一歩手前の系統がある。ここ1年で決着をつけ、長野で普及させたい。

最近、安曇野市では黒大豆のブランド化の動きがあり、生産者と加工業者が一緒になって取り組んでいるものの、裏付けとなる品質が伴わないと普及は難しい。

大豆のブランドといえば「丹波黒」が全国的に有名で、最近では山形のダダチャ豆の名前を良く聞く。ナカセンナリではブランド力としては弱いため、ブランド力のある品種を開発していきたい。品種だけでブランド化するのは難しく、何かとセットにしなければならず、品質が認められて、長野豆腐組合が構想しているブランド「信州豆腐」と一緒にアピールできればいい。大豆だけで一人歩きするのは難しく、大豆はあくまで原料。食品に加工され、付加価値が高まって結果的に品種も有名になるのが一番良い。

今後「信州豆腐」ブランドが立ち上がるのであれば、その原料になれるような良質の品種を作っていく。

矢ヶ崎和弘氏(長野県野菜花き試験場畑作育種部長/第13回長野県豆腐品評会での講演より)

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